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6、道具の話


家具を作る場合、木を切るにも削るにも道具がなくては何もできません。
人間とは、もし道具を持たなければ、なんと非力で弱々しい生き物なのでしょうね。

木工をするにあたって代表的な道具がカンナです。漢字で鉋と書きます。
日本のカンナは木材(主に樫)で台を作り、そこに刃をとりつけて使用するものがほとんどです。

一方外国のカンナは全体が金属製で、ボルトで刃の出し入れを調節して使うものが主流です。
初心者でもすぐに使えるという利点がある半面、その仕上がりはもちろんのこと、
その構造や基本的な考え方は、日本人の感性から見るとすこし違和感があるかもしれません。

私が使い慣れているという理由からではなく、木製の台で作られたカンナは
木を知りぬいた日本人が、長い年月工夫し尽くした世界一すぐれた道具のひとつだと思います。
非常に繊細な微調整ができ、その仕上がりの美しさも群を抜いています。

金属製の硬く重い台では、すこしの油断で表面に致命的なダメージを与えてしまうことがありますが、
台が木製である日本のカンナは、決して素材を傷つけることがありません。

日本の道具は基本的に引いて使う。一方外国のカンナ、ノコギリなどは押して使うという違いがあり、
はじめて日本の道具を使う外国人は戸惑うそうですが、だれもがいちど慣れると手放せなくなるようです。
今では海外の木工家の中にも日本製のカンナを使う人が多くいます。
それぞれのお国柄、作風によって使い分けるのがいいでしょう。

何十年と使い込んだカンナでも木の台は季節とともに、また湿度の変化とともに「動き」ます。
ときどき台の調整が必要となり、また刃が短くなってくれば「裏出し」といって
刃の調整もしないと長く使い続けることはできません。

唯一の欠点といえるものは、その習得に長い年月が必要だということかもしれません。
しかし日本のカンナはその習得にかける年月、努力を補ってあまりある働きをしてくれることでしょう。


                                                    
                                                                             
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