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木表と木裏の特徴やその使い分けについて文章で説明することは非常に難しいのですが、

興味のある方はちょっとお付き合いください。

針葉樹の場合(特に杉)木裏を表面として使用すると、夏目と冬目の境目がささくれてしまうことが多いので、

日常的に杉に接する機会の多い大工さんの中には樹種に関係なく、木裏を嫌う人が多いようです。

そして針葉樹、広葉樹を問わず木表の方が木目がダイナミックに表れることが多いこともあって、

そういう意味でも日本では
古来より木表が好まれてきました。

しかし私は広葉樹の一枚板でテーブルを作るとき、必ず天板には木裏をつかいます。

板は通常、木表方向に反る性質があって、おまけに木表をテーブルに使った場合、

下面よりも上面がより乾く傾向があるので、ますます反りが増幅されることになるわけです。

そこで木裏を上面に使った場合、木表側(下面)に反る性質と乾燥による反りが相殺され

板がより安定するという利点があります。

「神山一乗寺」にもすこし書きましたが、濡れ縁の場合も反りが発生するとその凹面に水が溜まり

腐りやすくなるので、木裏を使ってできるだけ凹状態にならないようにし、水はけをよくする方法が理想です。

能舞台の床張りもそういう考えから木裏をつかって張っていると聞いたことがあります。

昔の能舞台は屋外に作られることが多かったという事情がまずありますが、屋内に作られるように

なった現代でもやはりヒノキ材の木裏がつかわれているようです。

凹反りが発生してつなぎ目に段差ができると、それが微妙なものであっても、すり足での

足運びに悪影響がでる、などの理由もあるらしい。


そして私がテーブルの天板に木裏をつかうもうひとつの理由は、木表を上面に使った場合

(耳つきの一枚板の場合)

縁の見付き面積が広くなり過ぎてしまい、どうしても視覚的に重くボッテリしてしまうということがあります。

それが私のテーブルデザインとまったくマッチしないので、よほど木裏面に大きな欠点がない限り

テーブルに木表をつかうことはありません。